~発足10周年~提携コンクールとコンペとのポジティブな関係
ピティナ提携コンクールは間もなく発足10周年を迎えます。
2010年度に発足した提携コンクールは、5種類の受付からスタート。現在ではその数40に達し、地区数は209、(ピティナ・ウェブサイトからの)申込数は17,000を大きく超えています。
そしてやはり間もなく、ピティナ・ピアノコンペティションが開幕(3月1日に参加要項が全国楽器店等で販売)します。
各地のコンペ予選・本選を担うピティナの支部も、積極的に運営するピティナ提携コンクールは、コンペとどういう関係にあるのでしょう?
コンクールを複数併用したり、組み合わせ、順序を考えることで指導の効果を上げることができます。3名の先生にコンペと提携コンの「ポジティブな関係」を伺いました。
バッハコンクールのように、1曲をしっかり学べるコンクールの効用は大きいです。
1曲を深く掘れる経験をすると、ほかの曲の学習にも効いてくるように思います。
たとえば幼児部門で、地区を併願し2曲勉強させることもできます。
なんといっても、バロックは、ほかの4期の曲の学習に応用できます。ロマンでも近現代でもなく、バロックだから応用が効くのだと思います。
その理由ですが、ポリフォニーを幼児の段階から学ぶことで、耳が「聴く」ことを覚えるのではないでしょうか。右手と左手について、「王様と家来がまとまっているのではなく、両方とも王様なのよ」みたいな感じで、子供の興味を引くように導入していきます。
年齢があがるほど、いろんな曲を扱わなければならず、バロックを学ぶ時間がつい後回しになってしまうので、幼児の段階が重要です。
どのコンクールも、単発で終わらず次の学習につなげるコンクールであってほしいと考えています。その点、バッハコンクールは冬に経験して、夏のコンペに挑戦できるので両者がよい組み合わせになります。
ピティナ提携コンクールである中津An die Musikには教室の生徒ほぼ全員が参加しています。
コンペ、ステップそして中津An die Musikの入賞者演奏会を兼ねる「音楽の花束」が、生徒にとっての4つの本番になります。
私の場合、2016年くらいからコンペティションも併用するようになりました。
コンペティションには、教室の半分近くが参加するようになりました。
中津An die Musikには、課題曲部門と自由曲部門があるのですが、課題曲部門は比較的ハードルが低くなっていますので、ここを経験してコンペにチャレンジする子がいます。
次に、An die Musikは自由曲部門が、難しめの曲で参加する傾向にあるのと、連弾の課題曲の選択肢が少ないことから、連弾の参加者が若干少なくなる傾向があります。
その点、ピティナ・ピアノコンペティションは、連弾課題曲の選択肢が多く、ソロと別の日に参加日を選べる便利さもあって、まずピティナの連弾部門に参加して、そこからソロにもチャレンジしようという流れも出てきています。
それぞれのコンクールの特徴をうまくつかんで、その子にあったステージ経験をさせてあげれればと願っています。
コンペで4期の曲の学習を追求するのは、とても大変ですが、結果よりプロセスが大事、という信念で指導にあたります。
4曲がちょっと無理かな、という子にはバッハコンから始めます。何といってもバッハがやはり基本です。コンペと同じ審査員が多いというのも、採点票を読みとき、指導者にとって重要なことです。
昨今、フルタイムの共働きでらっしゃるご家庭も増えています。
保護者の方は忙しくてもピアノは続けさせたい。発表会はもとより、平日のおさらい会も見に来て下さいます。意識は高く持っているけれど、昔のように時間をとって一緒に思うように取り組めない悩みをかかえているので、コミュニケーションとして、保護者にはレッスンノートやメールでサポート、生徒には音楽的自立ができるようレッスンしています。
コンクールの選び方については、ピティナと時期が重ならないかながわ音楽コンクールを併用して、兄弟で敢えて違うコンクールにし、ご家族の負担が集中するのを避ける。また、1曲で参加できて、いちばん大事なバッハを勉強できる、バッハコンクールを選んだりします。
ピアノを舞台で弾くことは、筆記試験と違って消しゴムも使えないし、考え込む時間もないので、「本番力」「集中力」を磨くのにこれ以上のものはありません。繰り返し丁寧にご家族に伝えます。
提携コンクールによって、何といっても新しく指導者、学習者がピティナ・ステージに参加するきっかけとなります。
2019年度は、参加者のうち、1月20日時点ですでに全体の3割、5,000人以上が「初参加者」です。
現在、最も参加者の多い提携コンクールの上位10種は下記の通り。
多い順に | コンクール名 | ピティナからの申込数 |
---|---|---|
1 | ブルグミュラーコンクール | 8274 |
2 | バッハコンクール | 5784 |
3 | バスティンピアノコンクール | 812 |
4 | かながわ音楽コンクール | 549 |
5 | ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japan | 330 |
6 | 愛知ピアノコンクール | 275 |
7 | クリスタルPianoコンクール | 162 |
8 | 栃木県ピアノコンクール | 144 |
9 | ソナタコンクール | 138 |
10 | ラフマニノフ国際ピアノコンクールJAPAN | 117 |
昨年に続き最大の提携コンクールとなったブルグミュラーコンクールで初めてピティナ・ステージを指導したピアノ指導者は564人。この数は、コンペに比べて2倍近くになっています。
特に、左のグラフでは、2017年にブルグミュラーコンクールが初めての参加だったという方が、翌年度以降、どのステージに参加したかを示したもの。
継続率は常に、年々減少してしまうものですが、ブルグミュラー→コンペティションにチャレンジした方が翌々年にかけて増加した、ということを示しています。
このように、提携コンクールはますます多様になり、それによってピティナにチャレンジしようという土壌もまた、広がっていきます。
作曲家名を冠したもの(ギロックオーディションなど)からポピュラー(ローランド・ミュージックフェスティバル、クリスタル☆ピアノコンクール等)まで、楽器店主催から新聞社主催(かながわ音楽コンクール等)、また市町村や教育委員会主催(新人演奏家オーディション、あいの土山ピアノコンクール等)と、幅広い運営主体も登場してきました。
検定方式(雪だるまピアノ検定、KPAピアノグレード)、木米真理恵グランミューズサロンといった、評価、審査からは一歩距離を置いた「弾き合い会」スタイルも登場。ピティナ・ピアノコンペティションと共に広がる提携コンクールは、今も進化の途上です。